オフィシャルブログ

オフィシャルブログ

  1. ホーム
  2. オフィシャルブログ
  3. アロマセラピーとエビデンス:研究でわかっている効果・わかっていない効果

アロマセラピーとエビデンス:研究でわかっている効果・わかっていない効果

小見出しを追加.png

アロマセラピーは「香りによる癒し」として古くから親しまれていますが、近年はその効果を科学的に検証する研究も世界的に進んでいます。

とはいえ、SNSなどで見かける「どんな不調にも効く」といった表現の多くは、科学的根拠が十分とはいえません。

本記事では、研究で一定の効果が報告されている分野と、まだ研究途上にある分野を整理し、正しい知識でアロマセラピーを活用するためのポイントを紹介します。

アロマセラピーの科学的研究の現状

アロマセラピーとは、植物から抽出した精油(エッセンシャルオイル)の香り成分を活用し、心身のバランスを整える自然療法の一種です。

近年は、リラクゼーションだけでなく、医療・介護・福祉などの現場でも補完療法として用いられることがあります。

実際に、世界的な医学論文データベース「PubMed」では、「aromatherapy」で6000件以上の研究が登録されています。

ただし研究の多くはサンプル数が少なく、精油の種類や使用法が異なるため、結果にばらつきがあるのが現状です。

つまり、アロマセラピーは「一定の科学的根拠が報告されているが、まだ発展途上にある分野」といえます。

効果が示唆されている分野

睡眠の質の改善

睡眠分野は、アロマセラピー研究の中でも比較的エビデンスが多い領域です。

複数の研究で、ラベンダーやベルガモットの香りを吸入すると、主観的な睡眠の質が改善する傾向が報告されています(Lillehei et al., Sleep Medicine Reviews, 2021)。

また、看護職や介護施設利用者を対象とした試験では、就寝前にアロマを使用した群で入眠時間の短縮や中途覚醒の減少が見られた報告もあります。

ただし、これはあくまで一時的なリラックス作用によるもので、慢性的な不眠症の治療効果が確認されたわけではありません。

不安の軽減

アロマセラピーによる不安軽減は、多くの臨床研究で支持されています。

例えば、手術前の患者を対象としたランダム化比較試験では、ラベンダー精油の吸入がプラセボ群よりも不安スコアを有意に低下させたと報告されています(Tang et al., Complementary Therapies in Medicine, 2019)。

また、学生や更年期女性を対象とした研究でも、スイートオレンジやベルガモットなどの柑橘系精油を吸入することで、心理的ストレスの軽減が見られています。

これは香り刺激が嗅神経を介して扁桃体や視床下部に伝わり、自律神経系やホルモン分泌を穏やかに整えることによる影響と考えられています。

ただし、効果の程度は「軽度〜中等度」と報告されており、心理療法や薬物療法の代替とすることは困難だと考えられます。

痛みの緩和

アロママッサージや吸入法が軽度から中等度の痛みをやわらげる可能性があるという研究も複数存在します(Lakhan et al., Pain Research and Treatment, 2020)。

とくに、出産時の痛みや慢性的な関節痛などで痛みスコアの改善が見られた報告があります。

ただし、効果の大きさは個人差が大きく、プラセボ効果が関与している可能性も否定できません。

そのため、アロマセラピーは鎮痛薬の代わりではなく、補完的なセルフケアや緊張緩和の一手段として取り入れるのが現実的です。

まだ研究途上にある分野

アロマセラピーは、「うつ症状」「免疫」「認知機能」「ホルモンバランス」など幅広い分野で研究が進められていますが、現時点ではエビデンスが限定的です。

  • うつ症状の改善:軽度の気分改善を示す報告はありますが、抗うつ薬と同等の効果を示す根拠はありません。
  • 免疫機能への影響:試験管レベルでは精油の抗菌・抗ウイルス作用が確認されていますが、ヒトでの免疫機能向上を示す確実なデータは不足しています。
  • 認知機能の改善:香り刺激が脳血流や神経活動を高める報告はあるものの、認知症予防や改善効果としては未確立です(Jimbo et al., Psychogeriatrics, 2009)。
  • ホルモンバランスや更年期症状:一部で自覚症状の軽減が報告されていますが、ホルモン値の変化を裏づける確実なデータは少数です。

正しい知識で活用するために知っておきたいこと

アロマセラピーは、科学的根拠が完全ではない一方で、適切に用いれば心身のケアに役立つ手法です。

安全かつ有効に活用するために、次のポイントを押さえましょう。

      1. 精油は医薬品ではない:アロマセラピーは疾患の治療や診断を目的とするものではなく、セルフケアやリラクゼーションを支援する補完的アプローチです。

      2. 使用量と方法を守る:精油は濃度が高いため、原液を直接肌に塗布するのは避け、必ず希釈して使用しましょう。誤った使い方は皮膚刺激やアレルギーを引き起こすことがあります。経口摂取も控えましょう。

      3. 個人差を尊重する:香りの好みや感じ方は人によって異なります。心地よいと感じる香りを選ぶことが、リラックス効果を高めるポイントです。

      4. 信頼できる情報を参照する:SNSには誇張された情報も多く見られます。公的機関(厚生労働省、消費者庁、日本統合医学協会など)のガイドラインを参考にしましょう。妊娠中・乳幼児・ペットへの使用には特に注意が必要です。

    まとめ - 科学と実践をつなげるアロマ活用

    アロマセラピーは、まだ「科学的に完全に証明された療法」ではありません。

    しかし、睡眠や不安、痛みなどに関しては、一定の効果が示唆されていることも確かです。

    大切なのは、「過信せず・否定せず」、エビデンスに基づいた安全な活用を心がけること。

    香りがもたらすリラックスや安心感は、私たちの生活の質(QOL)を高めるうえで有用な手段となり得ます。

    科学的知見を踏まえつつ、自分自身の感覚も大切に――それが、これからの時代にふさわしいアロマセラピーの実践です。

    参考文献

    Lillehei et al., Sleep Medicine Reviews, 2021.
    Tang et al., Complementary Therapies in Medicine, 2019.
    Lakhan et al., Pain Research and Treatment, 2020.
    Jimbo et al., Psychogeriatrics, 2009.
    Hur et al., Frontiers in Public Health, 2022.

    1. 一覧へ戻る
    入会案内

    入会案内

    メディカルアロマやメディカルヨガをはじめとする
    セルフメディケーションやセンテナリアンなどに関心をお持ちで、
    当協会の目的や活動にご賛同いただける方のご入会をお待ちしております。

    日本統合医学協会は、東京と大阪に拠点を持ち、日本における健全な統合医学の普及と発展を目的として、平成12年に設立されました。メディカルアロマ、メディカルハーブ、またメディカルヨガやメディカルピラティスといった幅広い分野で技能研修や資格・検定の認定制度確立。統合医学の正しい知識の普及と技能向上に努めています。長年の実績と信頼ある当協会の資格は、医療・福祉の現場をはじめ、自宅サロン開業など転職・就職・開業にも役立てることが可能。統合医学の現場で働く皆様の活躍を後押しします。また、プロの育成だけでなく、セルフメディケーションとしてのメディカルアロマやメディカルヨガの普及にも注力し、誰もが「センテナリアン」を実現できる社会を目指し活動しています。

    センテナリアン学会