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アロマセラピーは「香りによる癒し」として古くから親しまれていますが、近年はその効果を科学的に検証する研究も世界的に進んでいます。
とはいえ、SNSなどで見かける「どんな不調にも効く」といった表現の多くは、科学的根拠が十分とはいえません。
本記事では、研究で一定の効果が報告されている分野と、まだ研究途上にある分野を整理し、正しい知識でアロマセラピーを活用するためのポイントを紹介します。
アロマセラピーとは、植物から抽出した精油(エッセンシャルオイル)の香り成分を活用し、心身のバランスを整える自然療法の一種です。
近年は、リラクゼーションだけでなく、医療・介護・福祉などの現場でも補完療法として用いられることがあります。
実際に、世界的な医学論文データベース「PubMed」では、「aromatherapy」で6000件以上の研究が登録されています。
ただし研究の多くはサンプル数が少なく、精油の種類や使用法が異なるため、結果にばらつきがあるのが現状です。
つまり、アロマセラピーは「一定の科学的根拠が報告されているが、まだ発展途上にある分野」といえます。
睡眠分野は、アロマセラピー研究の中でも比較的エビデンスが多い領域です。
複数の研究で、ラベンダーやベルガモットの香りを吸入すると、主観的な睡眠の質が改善する傾向が報告されています(Lillehei et al., Sleep Medicine Reviews, 2021)。
また、看護職や介護施設利用者を対象とした試験では、就寝前にアロマを使用した群で入眠時間の短縮や中途覚醒の減少が見られた報告もあります。
ただし、これはあくまで一時的なリラックス作用によるもので、慢性的な不眠症の治療効果が確認されたわけではありません。
アロマセラピーによる不安軽減は、多くの臨床研究で支持されています。
例えば、手術前の患者を対象としたランダム化比較試験では、ラベンダー精油の吸入がプラセボ群よりも不安スコアを有意に低下させたと報告されています(Tang et al., Complementary Therapies in Medicine, 2019)。
また、学生や更年期女性を対象とした研究でも、スイートオレンジやベルガモットなどの柑橘系精油を吸入することで、心理的ストレスの軽減が見られています。
これは香り刺激が嗅神経を介して扁桃体や視床下部に伝わり、自律神経系やホルモン分泌を穏やかに整えることによる影響と考えられています。
ただし、効果の程度は「軽度〜中等度」と報告されており、心理療法や薬物療法の代替とすることは困難だと考えられます。
アロママッサージや吸入法が軽度から中等度の痛みをやわらげる可能性があるという研究も複数存在します(Lakhan et al., Pain Research and Treatment, 2020)。
とくに、出産時の痛みや慢性的な関節痛などで痛みスコアの改善が見られた報告があります。
ただし、効果の大きさは個人差が大きく、プラセボ効果が関与している可能性も否定できません。
そのため、アロマセラピーは鎮痛薬の代わりではなく、補完的なセルフケアや緊張緩和の一手段として取り入れるのが現実的です。
アロマセラピーは、「うつ症状」「免疫」「認知機能」「ホルモンバランス」など幅広い分野で研究が進められていますが、現時点ではエビデンスが限定的です。
アロマセラピーは、科学的根拠が完全ではない一方で、適切に用いれば心身のケアに役立つ手法です。
安全かつ有効に活用するために、次のポイントを押さえましょう。
アロマセラピーは、まだ「科学的に完全に証明された療法」ではありません。
しかし、睡眠や不安、痛みなどに関しては、一定の効果が示唆されていることも確かです。
大切なのは、「過信せず・否定せず」、エビデンスに基づいた安全な活用を心がけること。
香りがもたらすリラックスや安心感は、私たちの生活の質(QOL)を高めるうえで有用な手段となり得ます。
科学的知見を踏まえつつ、自分自身の感覚も大切に――それが、これからの時代にふさわしいアロマセラピーの実践です。
・Lillehei et al., Sleep Medicine Reviews, 2021.
・Tang et al., Complementary Therapies in Medicine, 2019.
・Lakhan et al., Pain Research and Treatment, 2020.
・Jimbo et al., Psychogeriatrics, 2009.
・Hur et al., Frontiers in Public Health, 2022.
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